前回から更新の間隔が空きましたが、本シリーズは今週から毎週月曜の更新を再開します。あらためて、よろしくお願いいたします。

アクセシビリティの話には、JIS、WCAG、レベルAA、準拠——と略語と専門用語が続々と出てきます。本記事は、公共・学術サイトの担当者が発注や公開の場面で困らないために、最低限の用語の関係を10分で整理するものです。ブックマークして辞書代わりにお使いください。

JISとWCAGは「ほぼ同じもの」——一致規格という関係

WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)は、Web技術の国際標準化団体W3Cが定めるガイドラインで、世界のウェブアクセシビリティの事実上の共通言語です。

日本の JIS X 8341-3:2016 は、このWCAG 2.0を基にした国際規格 ISO/IEC 40500:2012 との「一致規格」です。つまり、JISに対応することとWCAG 2.0に対応することは、技術的な中身としては同じです。海外の解説記事で学んだ知識は、そのまま国内の実務に使えます。

ややこしいのは、WCAGの側だけが先に進んでいることです。WCAGは2.0(2008年)→2.1(2018年)→2.2(2023年)と改定され、国際規格ISO/IEC 40500も2025年9月にWCAG 2.2と技術的に同等の内容へ更新されました(ISO/IEC 40500:2025)。なお、WCAG 2.2にはWAICによる日本語訳があり、2026年6月に更新されています。原文が苦手な方も日本語で読めます。

これを受けて、国内JISの側でも2025年10月に改正原案作成委員会が発足し、改正作業が進行中です(2026年度中の発行見込み)。この改正の中身と実務への影響は、次回(第3回)で詳しく解説します。

レベルA・AA・AAAの意味——なぜ「AA」が標準なのか

WCAG/JISの達成基準には、A(最低限)・AA(標準的)・AAA(最高水準)の3レベルがあります。

  • レベルA:これを満たさないと、特定の利用者がコンテンツにまったくアクセスできない、致命的な項目
  • レベルAA:多くの利用者が実用的に使えるための、国際的にも標準とされる水準
  • レベルAAA:理想的だが、すべてのコンテンツで満たすことは現実的でない項目を含む

日本の公的機関では、総務省「みんなの公共サイト運用ガイドライン(2024年版)」がレベルAA準拠を求めており、これが事実上の標準です。自治体・独立行政法人・大学などの公的性格を持つ組織がサイトの目標を立てるなら、「JIS X 8341-3:2016 レベルAA準拠」が基準線になります。

「準拠」「一部準拠」「配慮」——自由に名乗ってよい言葉ではない

ここが本記事でいちばん重要な箇所です。「アクセシビリティに準拠」という表記は、自己申告で自由に使ってよい言葉ではありません。

ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)の「ウェブコンテンツのJIS X 8341-3:2016 対応度表記ガイドライン」は、対応度の表記を次の3段階に定めています。

  • 準拠:対象範囲のすべてで達成基準を満たすことを、試験によって確認した状態
  • 一部準拠:一部に満たない箇所があることを、試験によって確認した状態
  • 配慮:達成基準を参考に制作したが、試験は行っていない状態

つまり「準拠」と名乗るには試験の実施と、その試験結果の公開が前提です。試験の具体的な手順は後日の回で詳しく扱いますが、まずは「準拠=試験とセット」とだけ覚えてください。

よくある誤用3パターン

実際のサイトでよく見かける誤用を挙げます。自組織のサイトの表記と見比べてみてください。

パターン1:試験なしの「準拠」表記。 「JIS X 8341-3:2016 AAに準拠しています」と書いてあるのに、試験結果ページがどこにもない。これは表記ガイドライン上は「配慮」としか名乗れない状態です。制作会社に言われるままに書いてしまったケースが大半ですが、対外的には根拠のない適合宣言になってしまいます。

パターン2:「準拠を目標とする」と「準拠」の混同。 方針で「AA準拠を目標とする」と掲げること自体は正しい書き方です。問題は、目標の宣言がいつの間にか達成の宣言として引用されてしまうこと。方針(目標)と試験結果(実績)は別のページで、それぞれ明確に書き分けます。

パターン3:古い規格年の表記。 「JIS X 8341-3:2010準拠」など、旧版の表記が残っているケース。規格は2016年版が現行で、さらに改正が控えています。表記の年号は、サイトのメンテナンス状態を映す鏡でもあります。

まとめ:担当者が覚えるべきは3点だけ

  1. JIS X 8341-3:2016はWCAG 2.0と中身が同じ(そして国際側はWCAG 2.2=ISO/IEC 40500:2025まで進んでいる)
  2. 公的機関の目標水準は「レベルAA」
  3. 「準拠」は試験とセット。試験なしなら名乗れるのは「配慮」まで

次回は、いよいよ今年度最大のテーマ「JIS改正」です。改正原案の作成はすでに始まっており、発行は2026年度中が見込まれています。基準が38項目から55項目に増えるとは何を意味するのか、いま動いているリニューアル計画はどうすべきか。リニューアルを検討中の組織は必読の回です。

参考リンク

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